なぜ、敷金精算のトラブルが増加したのか
賃貸借契約終了後の敷金精算のトラブルが多く、後を絶ちません。宅建協会の不動産無料相談所の相談案件の分類でも、敷金精算の苦情・相談が最も多くなっています。
なぜ、敷金精算のトラブルがこんなにも多いかと言いますと、5年前に建設省(現国土交通省)が発行した「現状回復えおめぐるトラブルとガイドライン」(居住用)と数千円の費用で即日判決があるという「小額訴訟制度」が施行されたことに主な原因があります。
◆ガイドラインは判例等の考え方がペ−スに
なぜなら、それまでの敷金精算は全国的に退去後の敷金精算において、クロスの張替え、畳表替え等の費用を入居者が負担し、その費用を敷金から控除するという精算方法が行われていたのですが、ガイドラインでは「物件が契約により定められた使用方法に従い、かつ、社会通念上通常の使用により使用していればそうなったであろう状態であれば使用開始当時の状態より悪くなっていたとしてもそのまま賃借人に返還すれば良い」とし、つまり、入居者の不注意や過失による毀損、汚損等でなければ入居者は何ら修繕の負担は必要ないという考え方を示したため、全国レベルで入居者や入居者であった者が、これまでの敷金精算が、不当だと主張し始めたからです。このガイドラインはこれまでの判例や学説を参考に作成したものであり、今後はこれをベ−スに敷金精算を行うことになります。「いままでの清算方法で何も問題はなかった」という家主さんや管理業者がいますが、それは退去者がきれいに入居当時の状態にしていくのが当たり前という意識が当事者間にあり、従って裁判になりにくかったという背景によるもので、従前からこのガイドラインで示す見解を大半の裁判所がとっていたことを知らなかっただけと言えます。
◆借り手市場の中での敷金等への対応を考える
一方、現在の賃貸市場は供給過剰現象が続き、空室率が高く、賃貸経営も厳しい状況が続いていますので、こうした借り手市場の中で家賃の値引きや敷金の額を下げる傾向が見られ、借り手側の権利意識も強くなっていますので、敷金問題への対応もこうした状況を考慮し、ト−タルで経営に有利な方策を考えていくことが大切なことと考えます。こうした観点から、入居者に信頼され、入居者とオ−ナ−が安心して賃貸借契約を行うことができるよう、敷金精算に関する考え方を中心にオ−ナ−と管理業者との対話形式でアドバイスをするものです。
社団法人 香川県宅地建物取引業協会
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